陽採り
クローバー




下り坂は
南を向いていて
西に緩やかなカーブを描く
早朝
陽の当たる坂道を
桜並木のある坂道を
幼い彼は箱を抱えて歩いていた
簡単な恋をしていた
簡単な悩みもあった
けれど、口にはせずに
一人
陽採りしながら
歩いていた

手に持った箱に
掴まえた陽を
一匹一匹入れていくと
背後が
少しずつ
夕焼けになった
そのことに気づけないまま
陽採りしながら
歩き続けた

掴まえた陽には
防腐剤の注射をして
羽根を綺麗に広がるようにピンで留めた
その陽の美しさにうっとりと
箱を覗く顔には
薄くひげが生えていた

顔を上げたときには
すでにあたりは夜だった
もう子供ではない彼は子供のように泣いた
採れる陽がもう
見つからなかった。





 


未詩・独白 陽採り Copyright クローバー 2005-04-10 21:02:47
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