平安時代
丘白月

襖をいくつも越えて
床の間に飾られた
ロウバイの黄色い花が
寂しい部屋に
春の匂いを浮かべる

広い部屋を背中にして
眩しい太陽を浴びながら
二羽の鳩を見る

つめたい風の中に
小さなお姫様を呼ぶ声が
長い髪に隠れた耳にとまる

好きだった人が今朝
もう来ないと知った
二度と逢えないと知った

涙はもう小さいからだから
枯れてしまったように
赤い目が風にしみる

妖精が花びらをいくつも
運んでお姫様に着せる
初めての十二単

いつか一緒に
並びたかったと
となりにいると想っていた

あの人に聞かせるように
詩が生まれていく
初恋と知らないまま

遠くでお寺の鐘が鳴った
何度も恋の詩を唄い
手を合わせた

美しい十二単を
好きだった人が見ている
目を閉じたままそう感じた


自由詩 平安時代 Copyright 丘白月 2020-03-16 21:08:58
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