来訪者たち
吉岡孝次
或いは あらかじめ奪われてしまっているのではないか、
こころにもある肌で
季節を 風を
汲み上げる名付けようのない時間が。
古いノートの粗描きの若さは
覆いがたいほどの未熟さと生硬さで
見上げれば降り注ぐ夜空の底の果てしなさを
新書の呪いをくぐり抜けた諸世紀に 配しては
お膳立てに勤しむ復讐者気取りの
か細い詩句を 引き抜いてしまった、
誼みを 誰にも頼れなかった焦燥へと括りつけて。
だから判る、とは烏滸がましいが
並べれば 自ずから
来歴を欠いた百葉の鉋屑を透かしては
浮き上がる意匠にはしゃぐ来訪者たちの
筆先で擦り出す至らないガイストの厚みが
疑われてならない、とまで口中を
乾きで溢れさせてくれるので何も言えない。
だから?来訪者たちは手の内を曝し合うのだ。
背骨を置き忘れて ただ薄く
裏さえもないのかもしれない怪談の、「耳なし」として