来訪者たち
吉岡孝次

或いは あらかじめ奪われてしまっているのではないか、
こころにもある肌で
季節を 風を

汲み上げる名付けようのない時間が。


古いノートの粗描きの若さは
覆いがたいほどの未熟さと生硬さで
見上げれば降り注ぐ夜空の底の果てしなさを
新書の呪いをくぐり抜けた諸世紀に 配しては
お膳立てに勤しむ復讐者気取りの
か細い詩句を 引き抜いてしまった、
誼みを 誰にも頼れなかった焦燥へと括りつけて。

だから判る、とは烏滸がましいが
並べれば 自ずから
来歴を欠いた百葉の鉋屑を透かしては
浮き上がる意匠にはしゃぐ来訪者たちの
筆先で擦り出す至らないガイストの厚みが
疑われてならない、とまで口中を
乾きで溢れさせてくれるので何も言えない。


だから?来訪者たちは手の内を曝し合うのだ。
背骨を置き忘れて ただ薄く
裏さえもないのかもしれない怪談の、「耳なし」として


自由詩 来訪者たち Copyright 吉岡孝次 2005-04-10 18:10:41
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