古びたデジタル時計への愛の詩
ふじりゅう

それはデジタル時計の突然の疲弊
何の音もない空間に何の音もせず
徒に静止して何の表情も示さない

ごめんねの一言は喉から出ない
ごめんねの震えを喉ぼとけは感知しない

だってそれはデジタル時計
命令に忠実なだけのデジタル時計
たまにミスするデジタル時計
時間の相対性が証明されたあとで
淡々と生まれた時計のひとつ

くるくる針がまわっちゃあ
三半規管が壊れちゃいそうだって
そうやってぼくはデジタル時計だけを
愛することに決めたんだっけ
そうだっけ

君の液晶はダークマターのように
何一つ皮膚で感じられない

smartphoneで見る時計は綺麗で
アイツがたまにする計算ミスもなくて
世界中の時間を瞬時に計算してくれて
就寝時刻にそっと声をかけてくれて
アイツにできない実務をしてくれて
疲れてもすぐに回復するパートナーらしい

オーロラ色の夕日が差し込む時間帯
君の角ばった頭を撫でてみた
それは、ただのデジタル時計
それは、たまに計算ミスをする
それは、この場所の時間しか計算できない
それは、就寝時刻にも私を無視する
それは、突然疲れ果て、突然だんまりだ

それは、おおよそ、過去の遺産のような扱いらしい


自由詩 古びたデジタル時計への愛の詩 Copyright ふじりゅう 2020-03-11 19:36:15
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