ノースポールの妖精
丘白月

誰かが呼んでいる
小さい声だけど
はっきりと
胸の奥まで聞こえる

真っ白な花びらと
太陽のように黄色い花芯
薄暗く冷たい歩道に
温もりがとどく

花屋の前を通るたびに
僕は花の声を聞く
花の精が買ってと
連れて行ってと言う

黄昏の花屋には
誰もいない
そう誰もいない
誰も見えない

ただ声だけが聞こえて
僕は足を止める
たくさんの
北極という名の
ノースポールが見える

春まで待てない僕を呼ぶ
そばに置いてと言っている
幻想のショウウインドウが
ゆっくりと開く音がする

妖精がこちらへどうぞと
ノースポールを抱いている
妖精の国へ僕は行ってみる


自由詩 ノースポールの妖精 Copyright 丘白月 2020-03-09 08:04:53
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