ノースポールの妖精
丘白月
誰かが呼んでいる
小さい声だけど
はっきりと
胸の奥まで聞こえる
真っ白な花びらと
太陽のように黄色い花芯
薄暗く冷たい歩道に
温もりがとどく
花屋の前を通るたびに
僕は花の声を聞く
花の精が買ってと
連れて行ってと言う
黄昏の花屋には
誰もいない
そう誰もいない
誰も見えない
ただ声だけが聞こえて
僕は足を止める
たくさんの
北極という名の
ノースポールが見える
春まで待てない僕を呼ぶ
そばに置いてと言っている
幻想のショウウインドウが
ゆっくりと開く音がする
妖精がこちらへどうぞと
ノースポールを抱いている
妖精の国へ僕は行ってみる