知らない誰かが知らない誰かを
こたきひろし

知らない街を夢の中で歩いていた

背後から声をかけられた
ような気がした
立ち止まって振り返ると
自分の知らない誰かが知らない誰かと
偶然再会した様子だった

何だつまらない
自分の知ってる誰かが
声をかけてくれたんじゃなかった
と女は思ってしまった

誰か呼び止めてくれないかな
知ってる誰かでなくても
かまわないから

知らない誰かでもかまわないから
むしろ知らない誰かがいい
ゆきずりの人でもかまわない

勿論
それは男
勿論
見た目が第一の条件

私のこの寂しさを
いっとき慰めて
埋めて欲しい

知らない街を夢の中で歩いていた

途中で女は男に誘われた
理想の見た目の男だったから
女は男に抱かれた

だけど
いいところで目覚める

すると同じ寝床の隣には
だらしなく口を空けて鼾を立てている男がいた

その顔を見る度に
女は幻滅させられた

こんな男には絶対抱かれたくなくなっていた
だけど情ではしっかりと繋がれていた
いまさら離れられなかった

鼾を立てていた男は
まさしく俺だった
既に
あんたとは一生しないと
女から
つまり嫁さんから
告知されていた

可哀想な男だった


自由詩 知らない誰かが知らない誰かを Copyright こたきひろし 2020-03-08 07:09:30
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