燃やす(改訂再録)
ひだかたけし
全ての喪失は流れていき
乾き切った胸奥に
氷食地形の
研磨された岩石の如く
哀しみの蒼い窪みだけ
鋭く冷たく穿たれる
(愛は
私の中にある
思いを伝達しようとする
すべての努力を
根こそぎにして去っていったから
これからはもう
私の伝達する
言葉は全て
死滅していく他ないのだ)
言葉の砂漠に行き着くために
私は言葉を燃やしていく
数千数万数億と
記憶の面を掠めてゆく
銀の氷塊、放ち散らし
韻律の艶かしさに
時に眩暈しながら
詩の行を刻んでいく
詩の言葉を掬っていく