生真面目な心臓のためのダブルスタンバイ
草野大悟2

なつかしいテレピンのにおいよ.。
生真面目な心臓に、手かせ、足かせ、口かせ、黒い皮紐。縛り上げて、食い込む、青空。青空に、ねえ、青空に、きみ、青空にさ、青空に磔にするんだよ、なんども、なんども、なんども、なんども磔にするんだ。

風や雲や太陽や、そのたもろもろがいうことに耳をかすひつ             ようはないとおもうよ。いっさい。        
ぼくは、ぼくの心臓をぼくのすきにしているだけだもの、              だれも文句のつけようがない、よね。つけようがない!

思い切り咬んでやってもいいんだよ、殴ってもいい、
あっ、むち打ってもいいんだっけ? きみのすきにしてい
いんだ、交合してもぜんぜんへいきさ、

慣れっこなのに、ひたすらおどろくばかりの、おりこうさんのきみや、きみ。きみ、  きみ、きみ、眺めて、ほらほらあざ笑ってる、あざわらってんだ、悔しくないかい、  きみ、きみ、きみきみきみきみ悔しくないか。悔しくないか、悔しく。

食ってしまえよ、心臓は嘘つきのおにぎりだ、                   ロクデナシのわがままものだ。食えよ、それとも、きみの庭             にあそびにくる猫どもにひきわたすかい? きみのすきにし             ていいんだぜ、心臓だもの、ぼくの心臓だもの、すきにしていいんだぜ、
青空から引き剥がし、地面に叩きつけて失神させてもいい、
俯せにしてきみのすきなだけむち打つといい、むち打つと、             ねえ、むち打つと、むち打つと、いいんだ、いい、んだ! 
いいや、やはり、ここは、猫どもにまかせようか。
前足をちょこちょこして、心臓をころがすことだろう、ころ             がりは、不安定な曲線をえがきながら天にのぼろうとするだ             ろう、かるいんだ、かるい、とても、かるい。      

のぼっていくんだ。いく、いく、いくんだ、のぼっていくんだ、どこまでも、
どこまでものぼって、のぼって、のぼって、のぼって、のぼってのぼりつくして、
………破裂する !
破裂する、破裂する、破裂する、破裂する、破裂する、ああ、
破裂する、破裂する、破裂する、ぼく。ぼくの心臓。 

なつかしいテレピンのにおいよ。
そんなに心配することはないさ。
ぼくは、ダブルスタンバイさせているんだ、




















だれも気づけないところに、


























































とっておきの彼をね。


自由詩 生真面目な心臓のためのダブルスタンバイ Copyright 草野大悟2 2020-03-01 09:23:56
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