旅の震源ⅱ
非在の虹

待ち続ける者にして、探し続ける者は、
悲鳴の中で飢えて、
目くるめく逆光の音韻の中で、
彼らのための晩餐を支度する。
彼ら。・・・彼らとは旅する者。と、旅に同伴する者。
気流のような骨と多様性の構造を持つ肉で生成された者
粗末で柔軟なテーブルの上の禍々しさを微笑みながら
撫でまわす。それは、闇に消える若い女。
そして、若干の若々しい男達
パンという名の単純な個体と
葡萄酒という結果としての液体を饗する。
泡立つのは、抑えきれぬ羨望に満ちた旅の日々だ。
何のために、何のために旅。
日課として体を洗うという、目的の無い行為
という底なし沼のような思想(又しても嘲笑だ)
「おまえを捜す旅だった」
と、傍らのこま鳥が囀る。
血、小鳥の血が微かにささやいたのだった。
何処へ行く、何処へ行くのだ。
旅という言葉に旅の終わりという静謐が隠れ、
旅の始まりという排泄が震える。
唐土も南蛮も喉の奥へ落ち込んだ今、
火を焚いて、火の色を見て占う。
結末という甘皮に覆われた香油に包まれながら、
行き先について、
行く先に待つ殺人者について
旅する者が殺される瞬間について


自由詩 旅の震源ⅱ Copyright 非在の虹 2020-02-27 21:45:20
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