旅の震源ⅱ
非在の虹
待ち続ける者にして、探し続ける者は、
悲鳴の中で飢えて、
目くるめく逆光の音韻の中で、
彼らのための晩餐を支度する。
彼ら。・・・彼らとは旅する者。と、旅に同伴する者。
気流のような骨と多様性の構造を持つ肉で生成された者
粗末で柔軟なテーブルの上の禍々しさを微笑みながら
撫でまわす。それは、闇に消える若い女。
そして、若干の若々しい男達
パンという名の単純な個体と
葡萄酒という結果としての液体を饗する。
泡立つのは、抑えきれぬ羨望に満ちた旅の日々だ。
何のために、何のために旅。
日課として体を洗うという、目的の無い行為
という底なし沼のような思想(又しても嘲笑だ)
「おまえを捜す旅だった」
と、傍らのこま鳥が囀る。
血、小鳥の血が微かにささやいたのだった。
何処へ行く、何処へ行くのだ。
旅という言葉に旅の終わりという静謐が隠れ、
旅の始まりという排泄が震える。
唐土も南蛮も喉の奥へ落ち込んだ今、
火を焚いて、火の色を見て占う。
結末という甘皮に覆われた香油に包まれながら、
行き先について、
行く先に待つ殺人者について
旅する者が殺される瞬間について