最後の雨を待ってる
もとこ
灰色の空を見上げて
最後の雨を待ち続ける間に
きっとアタシたちの歴史は
色褪せてしまうのだろう
気がつけば無音になった街で
みんな空だけを見ている
鳥の瞳で、犬の瞳で、猫の瞳で、
(もう人の瞳はどこにもない)
それぞれの頭の中で
一斉にスマホの着信音
それでもみんな動かずに
足元から塩になっていく
しつこく鳴り続けたスマホが
やがて諦めて沈黙した後も
色彩を失った世界の表面を
覆い尽くした塩の柱たちは
やがて降りだすであろう最後の雨に
溶かされる時をじっと待ち続けている