願いそうで願わなかったあの事
万願寺

ツイッターが落ちた。ツイッターはものではないので、手を離しても重力によって落ちることができない。それなのに、それでも、ツイッターは落ちた。落ちて、音もなく地表にぶつかり、跳ね返って、キラキラピンクのゴムボールみたいにぽんぽんとこまかく跳んで転がっていってしまう。車も通らない、舗装もされていない、砂利道に雑草の生えた家の前の道の原風景。そこへツイッターはころころと逃げていってしまう。ああ。そこにいたのか。そこにあるのか。もう絶対という言葉なんか使えまいと思っていたのに、いまだに使える唯一の、絶対の場所、絶対に帰れないその場所へ。ツイッターは帰っていった。お葬式をしなきゃね、なんて女子はふざけてでも言わない。わたしは、夕食の席で不機嫌な家族を相手に、つい言ってしまいそうな感じもするけれど。あなたたちのいない場所です。ツイッターが行ったのは。私が行きたかったのは、そこではないのだけれど、その場所もほんとうにずっと、好きだったと記憶している。だから落ちていってよかったんだよ、ツイッター。お焼香、あげないけれど許してね。夢の中へ。


自由詩 願いそうで願わなかったあの事 Copyright 万願寺 2020-02-08 07:13:34
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