嘘の世界
玉響

いつか
私が生命と呼ぶこの感覚は
私を離れてゆく

私の体は腐敗し
大事なものは消え去り
後に残るのは
生きていた時の思いだけだ

死は常に私の周りに潜伏しているが
毎日のリアリティからは
まだ少し 遠くに見えているようだ

私は崩壊寸前のこの世界に生きている
しかし 誰もこのことに気がつかない

我々を包囲している
「リアリティ」と言われる
美しい欺瞞に満ちたファンタジーの世界

誰もが素顔をひた隠し
洗練された仮面を着けている
でも その仮面を剥ぎ取った後の
あなたは、私は、一体誰なのか?

そんなファンタジーの世界に飲み込まれ
藻掻き苦しみながら
今日も見えない敵と闘っている

快楽を求め
私たちは世界をバラバラに切り裂くが
自分たちの内側を観ることはない

本当に心の奥底で
望んでいることは…何?








自由詩 嘘の世界 Copyright 玉響 2020-02-05 12:12:19
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