蜃気楼
邦秋
目の前に広がる居心地の良い景色
私の動きにシンクロして情景が心地よく動く
常に傍にいるわけではない
眺めたいときに現れ、私の心を洗う
十分に心を満たされて
いざ触れたいと思い手を伸ばした瞬間に
それが、蜃気楼だったと知る
近づけばあなたに触れられるのか
近づくほどに逃げてしまうのか
それともあなたの方が
ただ見たいだけの都合のよい私を遠くから見続けるのか
何もわからない
前に進むべきか
この場を立ち去るべきか
どちらも正しく見え
どちらの先にも後悔が見える
白と黒が明確でない選択肢
どちらを選ぶべきか、その答えすらも
私の頭の中で蜃気楼のように揺らめいている