Physics Note 3
AB(なかほど)


25

さよならさえも言えない
あの人は
何と戦っていると言うんだろう

その瞳に映る空には

が見えない



26

どこまでも続きそうなきれいな道路を走る
どこまでも続くわけもないないことを知っている
子供達が窓に額を押し付けることもなくなる

そうしているうちに
昼でも夜でも
消えてゆくものがある



27

プラグのはじっこから放電された言葉が
穴の開いた心には帯電されず
熱を発することもできない

君も偽物だったならばと
あお あお 
と子供のように泣いた



28

あたしの夜が
無重力になった夜が
球になって

落ち着くことも
弾けることもできず
あたしのすべてを包もうとしている



29

ねえ、降るとどうして
こんなにも静かなんだろうね
静かでも幸せな日々があったのにね

雪々、
僕らの世界へ降るものが
君の世界でも降っているのかな



30

この世の全てに
いくつかのちからがあります
弱いちからと強いちからと

まだ見つかっていない重力と
あとは、
みなさんが考えてみてね



31

例えば二分の一の確率だけ
の君がいる
それは僕かもしれない

ふたを開けるまで
どちらの君がいるのか
あるいは僕がいるのか判らない



32

地球はまわる
ぼくらもまわる
ガリレオ相対性のきれいなこと

生まれて来たのだから生きてみる
その先は
ひしゃげた銀河や明日へつながって



33

飛べるわけでもないのに
いつの間にか
こんなに遠くになってしまった

遠ざかったのは彼らなのか
僕のほうなのか
教えてくれるはずのあなたは



34

朝届いた君の事を告げる手紙が
消えた
ノックはしなかった答えもなかった

いつまでも
何もないという思い出だけが
残った



35

魚屋さんには夕陽がさす
それは雨が降っていても
モールの中でもかまわずに

あいかわらずの僕は
うつむいたり顔あげたりの
魚屋さんで



36

ずっと前からそうしている
ときどき思うんだ
誰かのあえの風になりたい

その誰かはきみかもしれない
きみ以外の誰かにしか届かないかもしれない
それでも








自由詩 Physics Note 3 Copyright AB(なかほど) 2020-02-02 07:29:22
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