フラグメンツ カタログNo.391~420
AB(なかほど)



391

  咲くな
      まだ散るな


392
そうしたら今でもって
僕らは僕らに戻って
月はまた月になる


393
えん っていうのかな
すぐにとけてしまうようなひびを
つなげてつなげてかさねあわせて


394
これからどこに行こうか
ほんとうの心はどこに行こうか
どこに行こうか


395
肩越しにLEDがにじんでた
それはやがて朝焼けに溶けてった
いつの間にかさよならだった


396
そうね って聞こえた
それから
静かに抱きしめるように


397
帰るよ
もう降らないのかもしれない
もう降っているのかもしれない


398
ラグランジュポイントから
星々を眺めてた頃の声がする
それが十三夜


399
原核生物からシロナガスクジラまで
生まれた僕らが生きてゆく
この全ての世界へ


400
願ったとたんに
のっぺらぼうの町は消えて
今年の蝉が鳴き出した


401
もう夏の
あなたの夢の
七夜に八夜に


402
いろんなものに溶けきれず
いろんなことにぶつかって
よろめいてブラウン運動してる


403
あなたのとなえも
こころからであれと
てをあわせました


404
色の無い柔羽集め翼へと
そして広がり
ゆらぎはじめる


405
ちょうどいいところを見つけていけばいいのか
と思ってそばにいる
ここにいる


403
楽しいかい
すっかり乗り過ごした僕も
すぐに引き返す気にはなれない


404
はずれてしまいそうな
魂、魂、降て来よ
魂、魂、降て来み候り


405
ここほれと背中がつたえてくる
今のお前の生き方
じじばばに見せてやると


406
その人たちの顔も
見えない
見えないのだけれど


407
ふたりそろって
ニャー
   と哭く


408
歩き出す
明日へつながる
夜に横たわるために


409
日々、間が悪いと言われながら
そのままに生きて いる
昨日と明日の間の


410
ことのはの世界へようこそ
ようこその
はっぱ🍂


411
わすれたいこと
わすれへんても
ようゆうわ


412
ずっと待ってる
ずっと待ってるって言ったけど
もうそろそろひからびちゃいます


413
十二時閉店前、この夜に
中途半端なエロ本を片手に店を出たこの夜に
またいつか


414
やがて僕の描く齧りかけの林檎は
すっかり色を無くしてしまい
ただの林檎にもなれない


415
置き去りの絵本 店員さんに見つかる前に
誰かが手にしてくれるでしょうか
     それともその前に


416
それで十分だ
明日 海を見にいこうと思う
海を 見にいこうと思う


417
やがて翼をひろげるその時まで
それはずっと先かもしれないし、
もうすぐかもしれない


418
きのうかわした約束は僕も忘れた
そんなことより大事なことを
まもるために


419
さびしんぼうの夜が
ひざをかかえていた翌朝
鏡の中の目は赤かった


420
すっかり忘れてしまった貘の夢を食
べた僕の夢を食べた獏のその夢を僕
と獏が思いだせなくなるほうがいい






自由詩 フラグメンツ カタログNo.391~420 Copyright AB(なかほど) 2020-01-22 19:51:02
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