湿った水面の上の小さなうねり
黒川排除 (oldsoup)

視野に広がる
甘い木材の匂い
棺桶のごとく
その内側にいるかのごとく
死を目前にして
なお続く人生のごとく
狭く暗く細く長い通路を
這っているわたしと
わたしの一団
ひとりは肉親
先頭をわたしにして
ただ這って
そして進んでいる
低い天井
側面に光があり
その光源はわからぬ
高すぎる床
敷かれた布団があり
その原義はわからぬ
長く進んでいると
雑然とおかれた水筒
を握る老婆のような手
が見えたかと思うと
実際に出てくる老婆が
与える食料により
何日かは生き延びる
わたしの一団
ひとりは差し出す
住み心地はよろしいですか
ここよりもずっとね
老婆が指差す先
低い天井があり
開かれた上に開かれた
大きな空!
海原の上を滑りゆく
長い列車!
身を乗り出したまま
永遠に正気を失って
驚いている一団と
見やった彼方に
先頭車両は見えない
大きな蛇のように左にうねって
どこへ行くのか?
大きな蛇の腹に抱かれ眠り
どこへ行くのか?
みなも
うかがいたち
行く先々を
茫然と眺めるしかなく


自由詩 湿った水面の上の小さなうねり Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2005-04-08 23:19:10
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