住宅地
タオル

 
あらしが去ると
いびつな たくさんの傷ものが
辺りいちめん埋めつくすから
さきに ゴミを散りばめておいたのだ、として
誰も彼女を責めたりできないと
今日もぼんやりしたかおのRさんは言う
絶対絶対誰も悪くないって
そう言ってずんずん住宅地の奥へ進んでいく
すべてのいえに老人あるいは引きこもりの青年たちが潜み、
玄関の隠しカメラで我々の動向を見つめているとして
それは覗き見ている当人たちが悪いわけでも
ましてやわたしやあなたが悪いわけでも
ない
なぜなら
ここにいるのは幻想にこころ奪われた民なのだ
テレビにかねを払い 正しくない情報にもかねを払い
やはり幻想にこころ奪われた民しかいないところなのだ

たいせつな何かを奪還せしむる道化(トリックスター)などやはり幻想

だが
ここにていねいにゴミを扱う貴女がいる
本物の皇后なのかもしれない
ひとつひとつのプラスチックごみを検分し、
ときには水を掛け、
息を吹き返させようと努力する

あなたは!!!!!!

!!!!!!!!!!

ものをちゃんと視たことがある?と問われた


貴女の睫毛がはっきり視えたと答える

Rはぼんやりしたかおのままわたしの肘を小突く

狂人?

NO.

幻想と闘うため、それと反するものでここを埋めつくす、全力を賭けて。

燃やされるかもしれませんね、いつか。

ええ、そうですね…


今日も壊れていく住宅街…無意味なチラシを入れていく…
ポスティングの足音…・

ああ、やっぱりこの街ごとクシャクシャと丸めたい。


自由詩 住宅地 Copyright タオル 2020-01-19 21:00:19
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