鏡(回折格子、格子)
AB(なかほど)

その二枚か三枚かの舌が造る世界が
あなたには本当なんだとしても
私には無縁の世界で

窮屈そうな
言葉たちをほどいて
その向こうの空を見る

さよならさえも言えない
あの人は
何と戦っていると言うんだろう
その瞳に映る空には
青が見えない


暗号なんか要らない
解読の楽しみなんか要らない
論破のための言葉なんか要らない
私には要らない

今日雪降って消えた
ことばはとんと降ってこない

今日雪降って消えました
ことばはとんと降ってきません
そんな気持ちだけが
しんしんと積もっては消えて
これも恋なんだと笑う
赤い頬っぺたの頃の君が
湯気の向こうに消えた

今日雪降って消えた
ひざを抱えて眠る者たちに
降って消えた
ことばはとんと


その二枚か三枚かの舌が造る言葉が
真実なんだとしても
あなたには真実なんだとしても












自由詩 鏡(回折格子、格子) Copyright AB(なかほど) 2020-01-19 08:16:08
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