知らない街の
こたきひろし

知らない街の
知らない家で
殺人事件が起きた

知らない間に
知らない家族が
知らない殺人者に
惨殺された

凶器は知らない
動機は知らない

命は盗まれたが
他にも何か盗まれたかは知らない

その後の事は何も知らない
知りたくもない
知る必要もない

知らない
知らない
知らない
知らない
知らない

何度繰り返せば
いいのか知らない

知らない
知らない
知らない

母親はよくよく歳をとってしまい
俺が誰なのか知らない
自分の男の名前さえ知らない
自分自身が誰かさえ知らない

自分が生きている事さえ知らない
ついさっき簡易のトイレで排便した事さえ直ぐに忘れてる

そうなったら御仕舞いだ
だけどそれを言ったら可哀想
それを言ったら御仕舞いだ

それを言ったら御仕舞いだ

ところで冒頭の殺人事件となんの関係があるんだ
そんなの

知らないよ




自由詩 知らない街の Copyright こたきひろし 2020-01-18 00:58:10
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