冬の缶詰
丘白月


売れ残りの冬の缶詰を
雪の精が月の工場から出荷する
妖精はもういらないと言う
春の種に必要な雪解け水は
森に十分あるからと

綺麗な六花のラベル貼り
千個を雲の上に並べる
さあこれが最後だよ
タンポポの妖精がやって来て
中身を魔法で入れ替える

ひとつ開けて見せてよ
雪の精は星の缶切りで
冬の缶詰を開けた
風に吹かれて空に落ちるのは
タンポポの綿毛

雪のように街に舞い
雪のように眩しく
雪のようにまとわりつく
森の妖精は綿毛を見上げ言った
春の缶詰は今日発売だったっけ



自由詩 冬の缶詰 Copyright 丘白月 2020-01-17 19:39:47
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