遺品
ミナト 螢

私が初めて付けた口紅
まだ子供の頃だったのに
あれから少しも減っていなくて
お母さんどこへも連れて行って
貰えなかったのかな
確かお父さんが空港の免税店で
買って来てくれたもの
きっと大切にしていて
なかなか使えなかったんだよね
女の子を意識するのって
多分お母さんを見ていたせいだよ
こんな私でもスカート履いたり
香水をこぼしたのを覚えてる
それでも口紅を付けて良いのは
お母さんだけだと思った
私は握ることさえ苦しくて
棺の前から逃げ出したじゃない
口紅はもう私を探さずに
大好きなオムライスの
隠し味にしながら汚れたい


自由詩 遺品 Copyright ミナト 螢 2020-01-16 08:19:05
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