潮騒
ミナト 螢
脱いだサンダルが戻って来る
さっき蹴飛ばした光のように
潮の道連れをピンクに照らし
夏の端っこを避けて歩いても
トングが切れて指が挟めずに
サンダルの分かれ道で止まると
初恋みたいな伝票を切って
領収書の名前に君を書けば
ずっと側にいられると思った
潮が満ちる時の願いは
漁師の網に引っ掛かったまま
魚が喰いちぎるまでは生きてる
おまじないのフリをして
投げたサンダルが波に乗らずに
壊れたトングは釣り針のように
潮の道連れを餌に変えて
君が触れるなら掴まえただろう
自由詩
潮騒
Copyright
ミナト 螢
2020-01-15 08:14:37