SPIRITの夜
服部 剛
渋谷・RUBYROOMのカウンターで
白ワインを飲む
今夜は嬉しいことがあったから
先月はここで
赤ワインを飲んだ
この店では月に一度
「SPIRIT」という朗読会が行われ
今夜、新たな主宰者二人の
言葉の物語が幕を開けたのだ
ある者は夜の闇を語り
ある者は胸の奥に燃える火を語り
ある者はティッシュで鼻をふきながら
奇妙に深い物語を語る
数十名の参加者が帰った後
この店の空間で語られた
無数の言葉たち
余韻に浸るカウンターで
手にするグラスワインは減ってゆく
酔いどれた
僕の脳裏に浮かぶのは
先ほど、車椅子で参加した詩人が帰るとき
言葉の夜に出逢って間もない仲間たちが
声をかけあい、心をひとつに
階段から、地上へ運ぶ
一枚の美しい絵
ワイングラスも空になり
だいぶ体も温まってきた
そろそろ若者たちの行き交う
冬の道玄坂を下り
スクランブル交差点を渡り
終電間際の電車で
家に帰ろう