冬とまばたき
木立 悟





部屋のなかの折れた櫛を
覗き込む鴉
鉄格子 窓
鉄格子 窓


鏡を照らす鏡
夜を囲む夜
目が痛む 息を吐く
雪が止む


夜に切る爪
赤い中指
罪人の樹の枝中から
こぼれ落ちる泡の不可視


谷間に残る細い雪が
途切れ途切れの輪を連ね
翳りの翳りの底の底から
風の器を差し出している


氷の下の氷の下
光の板の重なりの下
鏡文字とともに流れる
凍りかけた陽のかたち


夜の声 硝子
足元の囁き
そわそわと
水に生えた水が揺れる


階段を下りる膝がかがやき
羽になり 羽になり
46656まで増え
窓の外に微笑んでいる


鳥の幽霊と紙のはざまに
光は昇り 地鳴りは到く
誰かに涙を見られないように
冬は一度だけまばたきをする


















自由詩 冬とまばたき Copyright 木立 悟 2020-01-10 09:52:48
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