みかんの皮を剥く
たもつ
みかんの皮を剥く
皮が出てくる
剥いたはずなのに
と思って皮を剥く
皮が出てくる
ええっと、何だろう
と思って皮をむく
皮が出てくる
落ち着け、今までのは気のせいで皮など剥いていないのだ
そう思って皮を剥く
皮が出てくる
猿が玉ねぎの皮を剥き続ける話を思い出し
皮を剥く
皮が出てくる
そう、猿と玉ねぎの話は玉ねぎが小さくなって最後に何も無いというオチだ
それならば、このみかんも小さくなって最後はなくなるのではないか
そう考えて皮を剥く
皮が出てくる
小さくなるかよく観察しながら
皮を剥く
皮が出てくる
大きさはあまり変わらないように見える
一枚剥いただけではわからない
どうせ皮が出続けるのだ
それならば一気に剥いてやれ
と決断して
皮を剥く、皮を剥く、皮を剥く、皮を剥く、皮を剥く
駄目だ、全然大きさは変わらない
ふと気が付く、もしかして
皮を剥く
皮が出てくる
そういうことだったのか
皮を剥く
皮が出てくる
なかなかやるな、これならどうだ
皮を剥く
皮が出てくる
やはりそうだ
これなら大丈夫
これなら絶対大丈夫
お主、ぬかったな
これでどうだ、剥いてやるぞ
かーわーをーむーくーぞー
皮を剥く
やっぱり皮は出てくる
無力感、脱力感、正義感でへろへろになる
もういいや、どうせいくら剥いても皮が出てくるんだろう
もう以下同文でいいよ
ここまでくればどうせコピペだし
皮を剥く
皮が出てくる
以下同文
以下同文
以下同文
もしかしてこのみかんは実在しておらず
想像上のものではないのか
皮を剥く
皮が出てくる
そうであるならば話は簡単だ
皮を剥き続ける
皮が出続ける
面白いように剥いて面白いように皮が出てくる
これはなかなか楽しい
剥き続けているうちにふと不安に襲われる
もしかして次の皮を剥いたら中身が出てくるのではないか
いやそんなことはない
ここまでやって出なかったのだ
出るはずがない
恐る恐る目を瞑って皮を剥く
そうっと目を開ける
良かった、皮はあった
これは想像の勝利だ
想像し続ける限り皮は出てくる
無限に出てくるのだ
勝った、勝ったよ、母さん
ついでに父さん
義理の姉さんも
日の当たる場所で
みかんはまどろみ
やがて深く眠りに落ちていく
その過程
みかんの想像の中で皮を剥き続ける僕が
姿を消す瞬間がある