どうせいつかは誰だって死ぬんだ
こたきひろし
蝶が一匹蜘蛛の巣に引っ掛かって動けなくなっていた
飛んで巣にいる蝶って訳か
その姿が何とも哀れで、どうにかしてやりたくなった
しかし
既に死んでいる様子だ
どうせ死んでいるのなら
救ってやっても意味を感じない
何より死んでいるものに触るのは気色わるい
果たして蜘蛛が蝶をどうするのかはわからないが
貴重な獲物なら奪うのも気が引けた
自然界のひとつの出来事だ
俺ごときがいたずらに手を出して何とする
黙って見過ごすべきがいいに決まっていた
俺の周囲には美人も不美人もいた
派手好きもいたし地味な女子もいた
化粧の上手い女性もいたし、下手な人も、しない人もいた
それぞれ色々いたが
あいにく
俺に寄ってくる異性はいなかった
それどころか
俺は世界中の女から避けていかれたのだ
何と言う事だ
いったい俺の何がいけないんだ
わからない
理解できなかった
だからって
俺の男性機能に欠けるものない
生殖能力に問題があるとは思えない
俺は多くを悩み苦しんだ
俺は不本意ながら罠を仕掛ける事にした
手段は選べないし選らばない
俺は一匹の蜘蛛になって
糸を紡ぎ巣を張った
待った
じっと待ち続けた
が
無駄だった
蝶はおろか
虫一匹引っ掛からない
全ては徒労に終わってしまった
どうせいつかは誰だって死ぬんだ
だったら
死んだつもりで生きようとしたのにさ
死んだつもりで生きようとしたのにさ
俺だって自然界の一部なんだからさ
生殖も死も自然界の出来事なんだからさ