ランチ
たもつ

 
 
店員さんが運んできたコップの中に
凪いだ海があった
覗き込めば魚が泳いでいるのも見える
こんなにたくさんの海は飲めそうにない
先ほどの店員さんを呼ぼうとしたけれど
彼女なら里に帰りました、と
他の店員さんが寂しげに教えてくれる
こんな日に限ってしょっぱい料理ばかり出てきて
ますます喉が渇く
おそらく海を飲み干さないとここからは帰れない
ランチの時間はとうに過ぎて
コップの海に夕日が沈み始める
帰る場所はもう海しかないことを思い出すと
やっと安心できて
波のように身体を揺らしてみる
 
 


自由詩 ランチ Copyright たもつ 2020-01-05 18:32:16
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