無題
朧月夜

つめたい雨が降っていてね、
つめたい過去がつめたい手ざわりで、
 ふれてくる。

つめたい雨が、冬の雨が、
 降っていてね、
 この心を濡らせばいいと。

あなたのその頬に滴らせて、
 冬の雨を、
 その心を濡らせばいいと。

部屋のなかは暖かく、澄んで、
 空気は心地よく、かわいている。
 つめたい冬の雨……

なぜ、雪ではないのかしら。
 冬なのに、なぜ、
 雪ではないのかしら。

そっと、窓べに立つ目のまえを、
 灰色の斜線をひいて、冬の、
 雨が落ちてゆく。


自由詩 無題 Copyright 朧月夜 2020-01-05 13:44:33
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