無題
おぼろん

青い色の湖のなかであなたはたゆたっている。
青い色の水があなたの塵と埃とを洗い流す。
(わたしのことは忘れてしまったのでしょうか?)

遠い空には、シリウス、ベテルギウス、プロキオン。
この街にいてはそんな星々の姿も見当たらない。
青い色の湖のなかであなたはゆられている。

(わたしのことは忘れてしまったのでしょうね)
青い色の水はあなたの罪と咎とを洗い流す。
(ああ、あなたに罪や咎などあっただろうか……)

この寒空の下に、何を求めるというの?
世界がわたしたちの巡りを回っているということを、
告げればそれは罪となるのだろう。

地球という星にはたして神はいるのだろうか。
それとも地球という星そのものが神なのだろうか。
星の見えない空に、シリウス、ベテルギウス……、そしてプロキオン。

青い湖のなかで、あなたは常にゆられている。
眠りから目を覚ますことなく、永遠にも近い時間のなかを。
あなたは泳ぎ、たゆたいながら進んでいく。

(ああ、あなたに汚れや穢れなどがあったのだろうか)
青い色の湖は、あなたの何を洗い流すのだろう……?
(もう、わたしのことは忘れてしまってください)

ふいに見上げる空には、垂れこめた雲以外の何かはなくて、
わたしはわたしのみでひっそりと、祈りを唱えている。
遠い空には、シリウス、ベテルギウス、プロキオン。

この地球は回っている。誰もがそのことを知っている。
でも、わたしは抵抗して言うだろう、世界がわたしたちの周りを回っていると。
少なくとも、わたしとあなたとの中心の場所から。

青い湖のなかで、あなたはたゆたっている。
青い色の水は、あなたの塵と埃とを洗い流す。
(わたしは夢みている。あなたが無垢であり無辜であることを、)

忘れてしまおうかしら……そう、忘れてしまうのが良い。
あなたの身は洗い清められて、そうしてどこへ? どこへ?
世界の巡りを、星々とともに巡るとでも言うのだろうか……

青い色の湖のなかで、あなたの身と心とはゆらいでいる。
そのことを誰も知らない。知らなくて良い……。
(そしてどうか、わたしのことは忘れてしまってください)


自由詩 無題 Copyright おぼろん 2020-01-03 14:02:47
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