レモン
mmnkt

雨は小康状態で
放課後の気配に似た
澄んだ空気が鼻を通り抜ける
走馬灯の影が揺れる
それは微かだったから
嫌な思い出も浅瀬で泳いでいる
本当に深いところで
思い出すものさえ虚像だとして
白い皿に置かれた一個のレモンは
何を暗示している

ほどよく濡れた雑草は
ちょうどいい美しさで
目の裏の邪気を剥がしてくれる
「聞こえない足音に
聞こえるまで耳をそばだてるのは
もうやめだ」

どこかから白鳥が
川を流れる私のレモンをくわえ
留まることなく
どこかへ飛び去っていった


自由詩 レモン Copyright mmnkt 2019-12-26 20:10:05
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