エゴ・エリスⅠ 朝早く 週の初めに 日の既に登る頃
PAULA0125
朝早く 週の初めに 日の既に登る頃
主の墓に着いた
一人むかえる後朝の
光を受けて 目を覚ませ
讃美囀る あしひきの
山尾の裾の 鶯の
歌こそ至極と 窓を開け
夜明けに淹れた珈琲の
沸き立つ薫が舞い踊ろう
ふと来やる 一陣の風に
皐の小枝が乗って入る
陽射し強く 雨の香り漂い
眼下に白銀の如き 秋桜の咲き乱ぐ
青葉光る椿の垣根に
紅白の花が しゃんと生る
一年の 十種はここに 揃い踏み
我が魂は ここに招かれ ここに憩う
光耀く 白鳩の瞳が
薔薇と鎖を 用いて祈り
恵みを受けた その心が
苦しみ生きた 浮世を思い
今は唯 御胸に抱かれるならば
それもまた 粋や善しと 微笑む眦
御国に玉音の 雨降らば
笑う顔が告げる 彼方への愛
「やれ 次は何を 命じられようか」
パンを焼き 乳を搾り
朝餉の恩寵に祈りを奉ぐと
歌はどこからか 伝わり
時の流れる川を見ようと
御使いは 楽士を伴い
門を下りて 橋を渡ろう
御笠を放り 水面に触れり
日輪 天から 動かず
さりとて光は 強くもなく
朝霧の晴れるを 照らすばかり
霧に触れんと 暖かく
その帯白く 掻き乱す
雪解け水は 巌を削り
潤すものは 喉に非ず
霊の隙間に 清水染み入る
朝の祈りを終えようと
我が胸には光 溢れよう
パン裂いた 皿置いて
家を出る足取りの 軽さを見て
友は呼ぶ 「お前も産んだか」と
私は答える 「ああ、産んだ」と
友は重ねて言う 「天を孕み 産んだのか」
重ねて答える 「産まぬのならば居らなんだ」
二人手を取り 王の住まう 宮へ急ぐと
朝起こした 白鳩をあやす 神の御子
遠く彼方から 我が君が為 摘む花の
音を聞いて 上げる御顔を
包む髪の隙間に 光零れるのを
今日も麗しと仰ぐ 神の子を
「ご機嫌麗しゅう 子供達」
「ご機嫌いかが 我が羊飼い」
「日毎輝くその姿 安らぎいると聞き
ゴルゴダの丘の風 一筋拾い
未だ憂世の 子等に告げよ 『救いは近し』
また汝らの 歌を聞き
その歓び 開き包んで 謳えや共に」
御顔を見やると 秋桜の上 向日葵の咲く
笑う山に 昇るが如く
光る桔梗 開くが如く
鳥どもはばたき 山脈震え
ただ一羽 ヒソプで磨いた 鴨居の上
白い銀貨を 誇らしげに掲げ
白い鳩が 歌い出す
「歌え歌え 御恩寵の 上枝へ留まれ」
「留まり聞け 我が願いの 成るを聞け」
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叙情詩「エゴ・エリスⅠ」