「もし」を重ね重ねたい
こたきひろし

方角はどっちでも拘らない
もし空を円盤が飛んでいたら
それを目撃してしまったら
携帯電話のカメラ機能で動画を撮るなんてとんでもない
私だったら
何も見なかった事にする
直ぐに忘れてしまう事にする
その事実を誰かに言うなんてしたくない
どうせまともに聞いてくれる訳ないからさ
それよりも何よりも
面倒臭いからさ

もし
私にも神のお告げなるものがあったら
間違っても世の中にそれを広めたりしない
でも
死んだ父親には報告したいな
死んだ母親にも

もちろん
私がいつか死んでからだけど

もし
私の悪い左の足が
心の歪みよりもひどくなったら
歩行が困難になるのかな
歩けなくなるのかな
一人の人間として

あの日
医者が診断したように

もし
私が本当に彼女を愛してしまったら
もう一緒に暮らせなくなるのかな
なんだかそんな不安に煽られる
日々が続いている

誰かを愛す資格って
誰かに愛される資格って
そんなもの要らないよ

色即是空
空即是色

色即ち是れ空なり
空即ち是れ色なり

色とは
この世界の全てを指している
らしい

英語にするとオールナッシィング
かな
全ては空しい

でも空はけして無ではないんだよな

そこが西洋哲学と
東洋の哲学の差異だって
若い頃
本で読んだっけ

読んだだけで
意味はまだ解らない

意味はまだ解らないんだ


自由詩 「もし」を重ね重ねたい Copyright こたきひろし 2019-12-21 00:28:32
notebook Home 戻る