失地
アラガイs


御存命でしょうか
なんて言われたらあなたはどうします
餌が鳩を縛るまま
衰退は止められなかった、と
御存命でしょうねたぶん
ただ、絵筆に描く人が見あたらない
それが哀しいのです

アルバムを焼きます
友人も見捨てます 
家族は振り返りません
恩寵などとは無縁です
なまぬるい言葉ですね、愛という鉱石は
何層にも覆い被さる土のなかから
化石で発見されました。

土地は手放しました
古い建物を取り壊し
思い出の痕跡は誰かに譲ります
道はアスファルトにかためられ
テキパキとした音の聞こえる
真新しい建物へと生まれ変わっていくのです

ご存じでしょうか
墓にはまだ名前もありません
裏切られるときの虚しさ
腐葉土の
、そこには生まれ育んだ種皮の
水脈の跡があり
駆け廻る犬や猫たちの草花
根にとられ土に還るだけの戯骨

ご存じでしょうか
そうたずねる人もいなくなりました
思い出すのは草稿(作文)
橋を吊す人々
頼りない足下を避け
誰にも渡せないので
あたまのなかに閉じ込めて終います。





自由詩 失地 Copyright アラガイs 2019-12-15 03:57:21縦
notebook Home 戻る