雪の降らない街に大雪が降った
こたきひろし

自室のドアノブに炬燵の電気コードを縛り付けていた
そのコードを自分の首に巻き付けて全体重をかけていた

第一の発見者は彼の祖母であったらしい
祖母は一階の居間で炬燵に入りながらテレビを見ていた
と言うのは私の想像で実際のところはわからない
家の中には祖母と孫の二人だけだったと話は聞いている
共稼ぎの父親と母親は勤めに出ていたとか

雪の降らない街に大雪が降っていた
その日に妻の従兄弟が自死したからと言って、この私に特別な感慨は沸き上がらなかった

訃報が電話で届いたから夫婦で葬儀に参列した
死者には申し訳ないかもしれないが実に迷惑な話だった

第一
彼と会った事がない

一度くらいは会っていたのかもしれない
記憶がないのでそれは無いに等しい

なのに葬儀に参列しなければならないのは
単純に妻の従兄弟であったからに他ならない

そう言えば
妻の親類には不可解な死者が他にもいた
妻の叔母さんはローカル線の電車で轢死していた
その御主人は自宅の庭の木に首を吊ってぶら下がったと妻から聞いている

よくもまあ
そんな女を私は妻に選んだものだ

よくもまあ
よくもまあ
よくもまあ


自由詩 雪の降らない街に大雪が降った Copyright こたきひろし 2019-12-14 22:24:06
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