ノート(夜走)
木立 悟




道は水に覆われている
水には雪が映っている
雲も風も星もなく
空は粗く覆われている


灯は消え
曲がり角は軽くなる
貨物のない貨物列車に
持ち上げられては降ろされている


とどまるものはうつむいて
すぎゆくものは華やいでいる
速さが何かをもたらす夜は
しばらくやっては来ないのだから


けして動きのせいでなく
たしかに熱は増してゆく
雪は水に落ちてゆく
水底の道に触れてゆく


火花は小さく転がりつづけ
空を照らしては遠去かる
すぎゆくものは水に映らず
どこまでも夜を駆けてゆく


雷鳴に見え隠れする音の鳥
飛び立つほどに
とどろくほどに
水の夜は華やいでゆく









自由詩 ノート(夜走) Copyright 木立 悟 2005-04-06 23:45:06
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