三日月のベッド
st

今夜はとっても
気持ちがいいね

と夜が星たちに話しかける

あの憎たらしい満月が
うすい三日月になってから
僕たちがいっそう
きれいに見えるね

と星たちが夜に
相づちを打つ

ちょっと前は
右向きのソファのようだったけど
今は下向きのベッドのようだね

と風が会話に
入り込む

とっても気持ちよさそうで
僕はあの上で眠りたい

と雲も会話に
入り込む

それじゃあ
風さんが雲さんを吹きつけて
ベッドにのせてあげたら

と夜が風に
話しかける

OK! わかったよ
おやすいご用さ

と風が雲を
やさしく吹きつける

しょんぼりして
口もきかなかった月が
ようやく

雲さん 寝心地はどうだい

と雲に話しかけると
雲はもうスヤスヤと夢のなか

いつまでもつづく
月と夜と雲
そして風と星たちの会話を

いつものように
公園のベンチで 
眺めていた少年が

なんだか
僕も眠たくなったよ

とみんなに微笑むと
月が少年に

もう遅いから
はやくお帰り

と家路をうっすらと照らす

月と夜と雲
そして風と星たちに見守られ

少年はゆっくりと
夜空を見あげながら
歩きはじめる

誰もいなくなってしまった公園は
しんしんとして

木枯らしの音だけが

通りすぎてゆく




自由詩 三日月のベッド Copyright st 2019-11-30 03:52:49
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