空白の家
mmnkt

空白の家があった
住人は凍えながら眠り起き
生活をしていた
彼らはそこにいなかったが
いないことが
いることを確かにする
そういう類のものだった

浮浪者が
毎晩
空白の家でコーヒーを飲む
お礼にお皿を洗う
たまにダンスをする
数あるコレクションから
シルクハットを一つ拝借する

「今日もお皿が綺麗ね」
「おや、シルクハットが一つなくなっているぞ」
その会話が
定番になっていて
繋ぎとめになっていて
彼らを安心して
凍えさせているのだった


自由詩 空白の家 Copyright mmnkt 2019-11-28 19:13:54
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