葉が擦れて雨の音あり
mmnkt

玄関のドアを開けると雨の音がした
アスファルトは濡れていなかった
中空を見ても降っているものはない
存在しない雨を不思議がっていると
中空の先に樹木があり
葉が風に吹かれ擦れていて
この音だと分かった

曇り空もこの錯覚に寄与していた
ネズミを漂白したような
雨が降っていてもおかしくない空だった

また会いましょう
さようなら
葉はそう言っているようだった
地面にはたくさんの落葉があった
雨の音を鳴らす葉も直にそこへゆくだろう
小さな工場としての役目を終えて

葉は
落ちていく仲間へ
世話になった樹木へ
或いは自然へ
別れの言葉を鳴らしたのかもしれない
内心を上手に隠して

今日は夕方から(本物の)雨らしい
思えば雨も落ちるのだった


自由詩 葉が擦れて雨の音あり Copyright mmnkt 2019-11-24 18:02:49
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