冬まだき
万願寺

寒そうにしているからってすぐに上着を貸そうとするのはちょっと待ってね、ほんとうに自分の上着を渡していいか、実はもう少し考えてほしい。貸してから、やっぱり返してなんて言えないよ。言えないでしょう、とても言えない。貸さないこともできないきみは寒さに震えるしかないんだろうけど、彼女の代謝が優秀だったら、自分の命を削るだけだよ。よく考えて。きみにいるもの、彼女にいるもの、きみがしたいこと、彼女の代謝が望むこと。よく考えて。よく見て。自分のために生きること、彼女に感謝はされないことを。


自由詩 冬まだき Copyright 万願寺 2019-11-23 23:54:50
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