マカロニ・インフィニティ
ブルース瀬戸内
マカロニと申します
ペパロニではなくて
マカロニと申します
身を捩れば無限大の
シンボルにも見えて
メビウス感が増して
深淵な雰囲気だって
醸すことができます
だけど日常は日常で
怒られることもあり
説教もされますけど
右から左へ流しては
隣の別のマカロニに
聞かせたりしてます
誰に怒られているか
グラタンさんですよ
僕はグラタンの中が
お気に入りなんです
だから潜り込みます
グラタンの中へ中へ
潜り込みっ放しです
でもグラタンさんは
そこに怒るわけです
多少なりとも表面に
マカロニ感出さんと
何グラタンなのやら
客に分からんやろが
とご立腹するのです
僕はこう思うんです
客が食べようとして
あれ、マカロニない
マカロニグラタンに
マカロニ入ってない
え、間違えたんかな
そう思ったその刹那
中のマカロニ登場で
ニョキキキと登場で
客は高揚するんです
これこそマカロニや
注文して良かったわ
足運んで良かったわ
この店最高やないか
そう思うはずですよ
だから僕は潜ります
グラタンさんの中は
すこぶる温かいので
大好きな場所ですし
包み込まれる感じが
母性を感じさせるし
父性だって感じるし
薄力粉丸出しやんか
そんな風に思えるし
とにかく好きなので
ずっと居たいんです
広い広い宇宙に比べ
狭い狭い場所ですし
無限大とはほど遠い
有限極まる場所でも
心から幸せを感じる
他にはない場所です
逆に無限大なんです
逆にメビウス的です
グラタンさんは急に
睨んではきますけど
テーブルに載せられ
客に見られるまでが
準備する時間なので
載ってしまったなら
つべこべ言えません
かのグラタンさんも
つべこべ言えません
僕はテーブルまでは
表にニョキっと出て
優等生ぶりますけど
テーブルに載る瞬間
ヒュンと潜るんです
グラタンさんの中に
ヒュンと潜り込んで
しめしめと嬉しくて
たまらず身を捩って
無限大をうそぶいて
悦に入るメビウスを
体現してやるんです
隣の別のマカロニは
やっぱり中に潜って
口をとんがらせては
電子タバコを真似て
シュポっと言います
グラタンが溢れます
とんがらせた分だけ
グラタンが溢れます
僕は身を捩らせては
無限大の振りをして
両穴からグラタンを
シュポっと出します
グラタンが溢れます
総量は変わりません
客が残して帰ったら
怒りのグラタンから
説教されそうなので
先に表に身を出して
ずっと出てた顔して
決め込むつもりです
最初から出てますよ
そんな顔を決め込み
佇んでみるわけです
あ、客が残しました
僕は即座に飛び出し
思い切りよく飛んで
皿をも飛び出します
虹の軌道を描きます
それでも身を捩って
くるりと小さく回り
無限大の軌道にして
鮮やかに着地します
何か始まりそうです
何かが始まる夜です
激怒りのグラタンが
上から覗いていても
今は気がつきません
今のところ幸せです