放水
mmnkt

人体のダムが注意報を出したので
放水せねばと小宇宙(コスモ)へ入った
ペルセウスの匂いが微かにただよっていて
一瞬くらっとなる

鳶が窓を開けていたので
冷たい風が元気に流れ込んできていた
足元が冷えるのをそっと我慢する
すると家畜のように順応できた

ブラックホールの中心から呼ぶ声に
気持ちだけ顔を近づけると手が伸びてきた
私は自分に酔っていたので握手でもしてやろうと
手を差し伸べようとしたとき心臓が鳴った

早く放水をしてここから逃げましょう
心臓の雀が厳しい顔をしている
こいつは頼りになる奴だ
こういう奴にはたとえ年下でも甘えてしまう俺がいる

(放水中……)
(放水中……)
(放水中……)
(放水完了)

放水音なんて誰でも同じなのだから
私も貴族もそして犬も大して変わりないと思う
東の雲が肌を赤くしていて
紅葉と溶け合っているのが窓から見えた


自由詩 放水 Copyright mmnkt 2019-11-20 19:39:55
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