若くして世を去れなかった
こたきひろし

若くして世を去れなかった
若くして世を去りたかった
訳でもないけれど

明日の方角が解らなくなった
どうしても
明日の方角を知りたくなった
から
昨日を振り返ってみる
今日の私は途方にくれているのに


目を背ける女の
耳元で囁かれるのは愛 と言う暗号

女は
強引に唇を吸われたので
男の舌を噛んだ

悲鳴をあげた男は
舌を噛みきられていた

口から血が吹き出て
男の顔は苦悶に歪んだ

それを見て
女は気がふれたように笑いだした
それから直ぐに泣き出した

そしてその場から逃げ出した

逆立ちすれば
地球を持ち上げられる

広場に現れた大道芸人は
地球が重すぎたのか
バランスを崩して
脳天を地面に激しく打ち付けてしまった

ぐしゃり

鈍い音がして
大道芸人は
命を落とした

若くして世を去っていった


自由詩 若くして世を去れなかった Copyright こたきひろし 2019-11-17 21:05:17
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