バースデイ
橘あまね
はじまりの海は遠浅で
かなしむことをまだ知らない透明なさかなたち
約束したはずの場所を
ゆききする微熱の波
遠い遠い夢の話
記憶をいくつも交差させて
分かれ道をまどう
ひとりあそび
しのび歩き
たどる糸は宝石ぐらい細い
星をみあげる作業
一連の火影にぬくもりをなぞらえて
ちいさな呼吸をつづる
新しいうつわ
お空の玻璃を
はるかな目的地を
見つめつづけたなら
近づけるかしら
ここが寒くなる前に
とても寒くなる前に
明るさの来る場所へ
旅鳥がさけぶように
歌うことをやめなかったら
幼子のひとみには
虹の色がぜんぶ含まれている
透明な苗木に運ばれる命
どの色を選んでも
いちばん尊い光がいつもそばにあることを
忘れないで
繰り返して