空白
ミナト 螢
長押しを続けるスペースキーが
溜め息の後で増えていくんだ
口を開けている白いノートに
イルミネーションが反射した夜
果物で手を汚すのが嫌で
透明な椅子に座らなかった
苦手なことが多くなるたびに
間隔を空けて歩いてきたから
時間は門限を既に破り
帰る理由を見失ったけれど
いくつ叩いたら答えてくれるの
消せない画面にしがみつきながら
点滅を数えるカーソルだけが
呼吸の始まりを整えていた
キーボードに打つ文字はなくても
埋もれたままの自分に気づいて
誰かひとりでも何かひとつでも
愛せるものを抱きしめた時には
その温もりで怪我をする前に
教えてあげたいパスワードの音