遥か遠くでは
こたきひろし

遥か遠くでは

小学校の古い木造の校舎
白と黒の教室の中で
若くはない担任の女の先生が
蓄音機のぜんまいをいっぱいに回した

低学年の音楽の時間である
先生は蓄音機にレコードをセットした
童謡の曲が流れ出した
ぜんまいが切れ出すと曲は間延びし出して
そして
セピア色の時間は
やがて靄につつまれると
見えなくなった

それから映像がかわった
高学年になっている
ある日
女の子ばかりが教室に集められて
特別な授業が開かれたらしい

男の子たちはその間どうしていたんだろう
何も覚えていない

ある日廊下で
クラスメートの操ちゃんのスカートのお尻の辺りが
血で染まっているのを見てしまった

その時丁度通りかかった女の先生も
気付いて
慌てて保健室の方へ連れて行ってしまった

私はませていた

それは女の子の体に植えられていた鬼灯の
育った袋が破れて
熔けてしまった紅い実が流れ出したに
違いなかった

遥か遠くから記憶が思い出が時折あらわれて
消えてしまうのは
重ねた年輪がそうさせるのか

私が
男の子の性に目覚めてしまった頃
三姉妹の姉たちは私に
女の子の格好をさせて
無邪気に遊んだ

あれは何だったのか
未だに
私は理解出来ない
でいる


自由詩 遥か遠くでは Copyright こたきひろし 2019-11-13 06:35:18
notebook Home