ラストお引っ越し
日比津 開

きっと、これが最後のお引っ越し
何を残し、何を捨てるか?
たぶん、捨てるもののほうが多い
引っ越し先では、生きるのに
最低限のものがあれば良い

八千代、柏、流山、松戸(以上千葉県)
練馬区、世田谷区、港区(以上東京都)
志賀高原、塩尻、松本(以上長野県)
伊勢崎(群馬県)、川越(埼玉県)
それから、大垣、各務原(以上岐阜県)
草津(滋賀県)、稲沢、清須(以上愛知県)

ふうてんの寅さんほどではないが
まるで浮き草のように
僕はあちこちを転々としてきた

一番懐かしい地は
父や母、弟たちと小中学校時代を
過ごした柏になる
一緒に鬼ごっこ、野球をした同級生は
いまどうしているだろう?

一番充実した日々を過ごした地は
練馬、世田谷になる
仕事が上手くいくようになり
結婚相手もできた

一番思い出深い地は
東京の港区になる
亡くなった娘とよく遊んだ
家の近くの公園や運河を
いつかまた訪れるだろう
おそらく僕の死の前に

転機となった地は
大垣になる
ここで失意から抜け出し
第二の人生を歩むことになった

そして今回、清須から名古屋へ
ここが僕の終焉の地になる
だから、もう余分なものはいらない
ゴミ御殿に埋まるより
部屋はがらんどうにしたい

そのために、いま準備をしている
人生で最後のお引っ越し
引っ越しが終わったら
友だちと好きなコンサートに行き
景勝地の旅行へ出掛ける予定がある
あと少し頑張ればー



自由詩 ラストお引っ越し Copyright 日比津 開 2019-11-11 04:52:47
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