もう冬でいいでしょう 【都々逸】
ただのみきや

休み増えても給料歩合 酒は増えても出かけない


端からなにも無かったくせに 失くしたものと想いたい


よどむ曇天どんより映す 病める瞳になにを読む


下手なエレキと下手な詩吟と 孫と爺がムキになる         


下手な俳優首を括った 自分一人を演じれず


相手かまわず和みはしない 古傷痛む季節なら


顔の半分マフラーに埋めて 埋まらぬ想い噛み締めて


甘いすっぱいしょっぱい苦い 日毎煮詰まる味も恋


鶏がら煮出し半日終わる なにを作るか決まらない


落した肩にそっと手を置く 風はやさしい世辞よりも


雪の匂いか袢纏はんてんはおり 酒を切らして急ぎ足


人のつぶやき上手に聞いて うつむくうなじ白匂う


木枯らし吹けば人肌恋し 湯たんぽ何処へ置いたやら


繁る言の葉すっかり散って 互いの窓が気にかかる


書きとる前に飛び去る歌は 誰の窓辺の鳥となる


翅も擦り切れいとこと切れて 骸も空ろきりぎりす


死んでしまえと鏡に吐いた 昔の自分刺しに来る


地獄極楽温泉巡り ウィルギリウスとダンテ往く




               《もう冬でいいでしょう:2019年11月9日》










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