自分史(音楽事務所勤務時代 9 ー 舞踊公演)
日比津 開

 神原音楽事務所では、ピアノ、バイオリン
オーケストラなどの純クラシック以外にフラ
メンコ、バレエ、ナポリ民謡、フォークダン
スなどの舞踊公演を手掛けていた。

 特にクリスティーナ・オヨスが主催するフ
ラメンコの舞踊団には社長が力を入れており、
何度も招聘し全国で公演を繰り広げていた。
オヨスは世界的なフラメンコダンサーで人気
も高かったが、東京近辺の主催公演だけでも
何回もありホールを一杯に埋めるのは通常の
展開だけでは難しかった。

 そこで、僕が担当する企業・団体の販売ル
ートに力を入れることになり、総合商社や製
薬会社、音楽鑑賞団体などに公演の紹介、チ
ケット販売に駆けずり回った。紹介先、取引
先が増えてきたため、僕のほかに新たな募集
で人を1人増やしてもらい2人体制で取り組
むことになった。

 こうしたことにより成果が上がり、企業・
団体向けのチケット販売は1000~2000枚規
模になった。商社などでは特に女性社員から
の申込みが多く、女性が興味を持ちそうな公
演は実績に繋がることがわかった。スウェー
デン王立バレエを招聘したときも同様な展開
をし、こちらはパンフレット、チラシに氷の
デザインをバックにバレリーナを配したもの
が好評だったこともあり、チケット申込は順
調に伸びた。

 ナポリ民謡の団体の公演のときは、都内の
主なイタリア料理の店を社員全員で手分けし
て回ったこともある。公演自体は面白いのだ
が、チケット販売は大苦戦し1500人収容の
ホールに500人前後しかお客様が入らないこ
ともあった。それでも、観に来た人は喜んで
帰る人が多くやりがいがあった。

 フォークダンスの公演では、各地のフォー
クダンスグループを幾つも回ったこともある。
社長は通常手堅い経営をしていたが、自分が
好きなものにはときに採算を度外視してもや
ることがあり、そんな社長を尊敬する僕は少
しでも役立ちたいと仕事に取り組んだ。


散文(批評随筆小説等) 自分史(音楽事務所勤務時代 9 ー 舞踊公演) Copyright 日比津 開 2019-11-08 18:04:40
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