少女A
もっぷ
人は一度幸せを手に入れてしまうと
幸せとは簡単に手に入るものだと思うようになるらしい。
人は一度幸せを手に入れてしまうと
幸せを簡単にわけてあげられると思うようになるらしい。
一度もキラキラ綺麗な砂糖菓子をもらったことのない少女に
3本のマッチを恵んでくれた人がいた。
火を灯してしまえばいつかなくなる、それもたったの3本のマッチ。
真冬の寒い晩だった。オーバーもマフラーも手袋も持ってはいない少女。
3回限りの夢を見せるための、神さまの最後のお慈悲。
わたし、もう何本灯したっけ?
ああ、どうしよう、見つからないんです!神さま!
1本も・・・もう1本も残っていないんです・・・
そしてなんだか・・・眠くなってきて・・・
ここは、どこ?今までで一番、安らげる・・・
火を灯せば見ることのできる幻影。
火を灯せば暖かい食卓が見えた。
火を灯せば暖かい家庭が見えた。
火を灯せば・・・それが最後なのに、
最後の火を灯してしまった少女が見た、最後の夢は
それは一体なんだったのか。
けれど少女はもう二度と、語らない、夢見ない、寒くない。
なんて幸せなこと!