少女A
もっぷ

人は一度幸せを手に入れてしまうと

幸せとは簡単に手に入るものだと思うようになるらしい。



人は一度幸せを手に入れてしまうと

幸せを簡単にわけてあげられると思うようになるらしい。



一度もキラキラ綺麗な砂糖菓子をもらったことのない少女に

3本のマッチを恵んでくれた人がいた。



火を灯してしまえばいつかなくなる、それもたったの3本のマッチ。

真冬の寒い晩だった。オーバーもマフラーも手袋も持ってはいない少女。



3回限りの夢を見せるための、神さまの最後のお慈悲。



わたし、もう何本灯したっけ?

ああ、どうしよう、見つからないんです!神さま!

1本も・・・もう1本も残っていないんです・・・

そしてなんだか・・・眠くなってきて・・・

ここは、どこ?今までで一番、安らげる・・・







火を灯せば見ることのできる幻影。

火を灯せば暖かい食卓が見えた。

火を灯せば暖かい家庭が見えた。

火を灯せば・・・それが最後なのに、

最後の火を灯してしまった少女が見た、最後の夢は



それは一体なんだったのか。



けれど少女はもう二度と、語らない、夢見ない、寒くない。





なんて幸せなこと!




自由詩 少女A Copyright もっぷ 2019-11-05 22:11:16
notebook Home