朝起きて、いきていく
竜門勇気


酷くやな気分だ
誰ももう僕のベッドには近寄らない
古い目覚まし時計
親父が 長く務められたからと貰ってきた
そいつが僕をせきたてる
お前の番だ、そういうことなんだ、ってな

寝過ごす自由があれば
今日の気分が今日の予定より重要なら
何度も愉快なあの夢の続きも見れたのに
なにかとても好きなもののことを考えよう
牛乳のコップの前で

そうだ、これが今日の朝食だ
朝食を食べるときは
こういう気分でいなくちゃいけない
何かとても気分のいいことを思い出そう
牛乳の白さの前で

立ち上がる気分では、なかった
座り込んでメソメソとしてるような時間もない
お前は今日は誰なんだい?
誰なんだろう
どんなやつなんだろう
玄関の前で靴を履くとき
一度だけ自分に問いかける
誰でもない
自分ですらない
こいつは僕を乗っけたまま
誰でもないまま動いてる

すべての食卓に花がある気がする
道を隔てて世界があるような気がする
見落としてきたものが集まって
僕の見てきた世界じゃないことを作ってる気がしちまう
僕は間違ってて
僕じゃないものが正しい
朝起きて生きている
また、朝起きて生きている
死者が残した呼び声が
明日をなくした肉体を
明日も揺り起こす

僕が間違ってて
僕じゃないこの白さは正しいのか?
牛乳の前で目をつむる
明日、牛乳は白いのか?
明日も僕が間違ってて
牛乳がそこにあることを祈ってる
目覚ましが今日も鳴る
目覚ましが今日も鳴る



自由詩 朝起きて、いきていく Copyright 竜門勇気 2019-11-04 23:34:57
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